タテ糸の準備である整経、その前の「糸繰り作業」をご紹介していきます。
小割り
整経するときには、整経メーター数に応じた糸量を巻いたコーンもしくは枠を準備します。
この作業を、「小割り」と言います。
ここがいい加減だと、整経中に糸が切れる要因になってしまうので大事な作業なんですよ。
そして、数が必要な時は、すごく時間がかかります。
タテ糸本数が多い場合は、200コーンぐらい準備することになるので。
今回は、カセからコーンに巻き上げる作業をお伝えします。
カセを巻き取る
少し暗いですけど、これがカセです。
これは「紬糸」です。見た目は綿っぽいけど絹なんですね。
絹紡糸を紡績する際に生じる短い繊維を再度紡績した糸のことをさします。
これを通称「クモ」と呼ばれるものにセットします。
クモっぽいからみんな「クモ」と呼ぶんですが、正式名称はきっとあるはず。。
これもよくみると昔からの知恵が垣間見れます。
この糸の高さを調節することで、カセの微妙なサイズ違いに対応できるんです。
緩んでいると、糸も出にくいので。
ワイヤーは横に広がろうとするので、糸がズレないようになっています。
逆にワイヤーを縮ませると、糸がズラせるという仕組みです。
ちょっとしたことですけど、この形にしたのがすごく合理的でステキ!
カセには数カ所、「ヒビロ」と呼ばれる糸が結ばれています。(呼び方は色々あるようです。)
糸がバラバラにならないよう、小さい束で区切られているわけです。
ヒビロの結び目を前にして、広げるようにしながら、全体をほぐします。
1箇所、ヒビロにカセの糸が巻きつけられているところがあると思います。
ここは一番最後にカットです。
カセにした最初の糸と最後の糸がここに括り付けてあるんです。
カセの後ろから出ている糸は、端っこに括り付けてはねておきます。
まっすぐ出やすい糸が、最後に巻かれた糸の終わりなので、こちらを使います。
ワインダーにセットしたら、ゴーです!
糸を巻き返す機械をワインダーと言います。
手織りだと、もっとアナログなモノを使うと思いますが、カセの取り方は一緒かと思います。
巻き取りだからと適当にやってはダメです!
糸によってテンションを変えたしながら、キッチリ巻くようにするのがポイントです。
整経するときの糸の解除がスムーズでないと、糸切れの要因となってしまうのです。
準備工程の心得
織りというのは、「さて織ろうか」ぐらいの感じでは始まりません。
長い工程を経て、「織る」という動作に行き着きます。(機械織りでは特に)
糸繰り→整経→タテ繋ぎ→ドロッパー差し・筬入れ(必要に応じて)→織り付け→織り
ざっとこんな感じ。
どの工程も手を抜けるものはなく、ここの精度が織りに直結するんです。
最初はピンとこなかったことも、自分で経験する度にその大切さに気付かされます。
なので、カセの巻き取りひとつとっても、「流れでやる作業ではないんだ!」と自分に言い聞かせながらやってます。
地味なことをどの精度で具現化できるか、ここにモノのクオリティがあるんです。