職人目線で民藝を考える、工藝品と美術品の違い

thinking

民藝という言葉を知っている人は割と多いと思います、

しかし、「どんなものを民藝と言うか?」と聞かれると、知らないという人もまた多いのでは。

ぽい感じ、的な、みたいな、

そのぐらいの認識でも、古道具を見ると、脳内の民藝イイネ!ボタンをポチる。

古いものに良さを感じるというのは、近代的視点なんだろうが、

民藝の美を知らない人をも惹きつけるナニカがあることに、大変興味がある。

そもそも民藝運動は、華美な装飾を施した美術(貴族的工藝)のみが高く評価された当時に対して、

美の新しい見方(民衆的工藝)を唱えたものです。

それは無名の職人によって作られた量産品であり、日常の中に溢れるモノであった。

そこには、ハッキリと近代的な美術品とは違うことを意味する保守的な態度があったとみる。

では、それを分けたものはなんだったのか?

今回は、そのあたりを少し掘り下げてみようと思います。

モノの輪郭が見えれくれば、僕らの美意識も少し際立ってくるだろう。

そしてその感触を楽しめれば、もっとオモシロイのだ。

民藝とは何か?

民衆が日々用いる工藝品である。

故に、実用的工藝品の中で、もっとも深く人間の生活に交わる品物の領域である。

故に、たくさん作られるもの・安く買えるもの・どこにでもあるものである。

柳 宗悦の「民芸とは何か」という著書には、このようなことが書いてあります。

日常に溢れていたモノの中にも美があるということを説いているが、大事なのはその先だろう。

富貴なものにのみ美を認める見方は、極めて貧しい習慣に過ぎないのです。

ごく並のものであるから、外形の上や用途の上では、上等でないかもしれませぬが、美から云っても粗末だというのは許し難い不注意なのです。

「民藝とは何か」 柳 宗悦

僕らはしばしば習慣の中に生きています。

なので、疑うことを忘れてしまいます。

こういう言葉を見ると、うんうん確かに!と思うのだけれども、

一方で何の疑問もなく美術館を楽しんで終わりというのは、なんだか粗末だと思うのです。

知らず知らずのうちに、良いと言われているものは良いモノだという見方をしている。

良いモノかもしれないけれども、疑って観ることがモノの本質に迫る唯一の方法だと思うのです。

当時も、このような保守的態度が民藝運動を突き動かしたのではないかと想像します。

貴族的工藝と民衆的工藝

柳 宗悦の言葉には、様々な対比が出てきます。

面白いなぁと思ったので、少しまとめてみます。

貴族的工藝

官・特殊・有想・分別心・美術家・自由な心

民衆的工藝

民・通常・無想・平常心・職人・伝統的な心

ここで大事なのは二元論的に捉えるのではなく、心の置き場がどこかということです。

僕もいち職人として、この考えにとても共感します。

ここを正しく観れないと、ちっともモノの輪郭は現れないだろうから。

柳宗悦はさらに言います。

有想の粋に止まって加工の重荷に悩んでいます。

いわゆる上等品に見られる通有の欠陥は技巧への腐心なのです。

「民藝とは何か」柳 宗悦

緻密に豪華になっていけば、見た瞬間のインパクトはあります。

しかしながら、それは同時に繊弱になることでもある。

使うには壊れやすく、故に民藝においては生命の勢いがないと捉えた。

これもすごく面白い視点

工藝品というのは、やっぱり使ってなんぼ!なんですよ。

それは作り手のみでは成立しないということ、

つまり、使い手との関係性の中に健全なる美が宿るのだ。

その美の根幹には、名もなき職人の無想ともいうべき技術にあるのです。

ここに民藝の精神がある。

民藝と芸術を分けたもの

結局のところ、それは心の置き所だと思います。

これは形而上学的な話ではなくて、身体性に基づくものです。

無名の職人によって作られた量産品というのは、分業制における反復の中で作られます。

話しながら笑いながらでも、それでもって正確な技術、

この時の心の状態が平常であり無である、故に美しいのだという。

(僕的にはちょっと美化しすぎなところもあるけれども)

ニーチェが言った、「真理は表層にこそ現れる」みたいなことを思い出す。

華美な美術品というのは、真理を奥へ奥へ隠そうとするところがあり、

それに比べて簡素な工藝品は、ありのままを出そうとするところがあるように思います。

それと同時に観る側・使う側がどう捉えるかは、

直感をどう信じれるかの問題でもある。

良いものだと言われるものを良いと観るのではなく、

自分がどう良いと思うか、その視点を持ってきたのが民藝の心であった。

そういう点では、作り手・使い手、各々の心の置き場が一致してこそ、

美は際立つのだと思うのであります。

以上、SHOCKMAN

参考本:「民藝とは何か」柳 宗悦

民藝に対する柳宗悦の言葉が、とても刺さりました。

僕らの美に対するなんとなくの考察を、もっともっと深めることに豊かさがあると思うのです。

民藝、気になる方はぜひ、読んで見てください。

Kindle Unlimitedに入れば、無料で読めるのでオススメです。

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